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KTM・1190 RC8―バイク界のポルシェ?

Rc8_1

フェラーリ vs ポルシェ

タイミングが合わなくて、ずっと乗れずにいたKTM・1190 RC8にようやく試乗できました。

DUCATI・1198系と比較されることが多い同車ですが……1198系はフェラーリ、RC8はポルシェに通じるという印象を持ちました。

フェラーリ→1198系は、すべてが情熱的で、ある種、刹那的で、ハマればエクスタシーを感じるけれども、渋滞路や遅い車に引っかかるなど、状況によっては我慢しなければならないこともある。

一方のポルシェ→RC8系は、知的で実用性に富み、どんな状況でも我慢は不要というところでしょうか。そのぶん、1198系ほど濃密なエクスタシーは得られないかもしれませんが、常においしいところを味わっていられます。

「ポルシェデザイン・スタジオ」がオーストリー(KTMの母国)にあるのも、偶然ではないような気がします。

では、RC8の乗り味をもう少し具体的に……。

よくわかってる♪

Rc8_2

※写真のライダーは編集部・白土(身長165cm)

またがった第一印象は、スーパースポーツとしてはシートが低めで、上半身の前傾が緩やかだなぁ……というもの。ストリートファイター(スーパースポーツベースのスポーツネイキッド)に近い快適性を持っています。これが渋滞路を苦にしない最大のポイントですね♪

乗り始めてすぐに気がつくのは、乗り心地がいいうえに、バイクの重心をつかみやすいこと。しかも、小さなアクションでクルクルと曲がります。そこそこのスピードでコーナーにアプローチすると、倒し込んでからクリッピングポイントまでの動きにキレがあり、前後タイヤから返ってくる接地感にも芯があります。旋回中に、さらにイン側に腰を落とすことも簡単ですし、ライディングフォームの自由度も大きい。

クリッピングポイント付近からは、シートにしっかり乗ってスロットルをワイドオープンできます。このときのリヤタイヤのトラクションもみずみずしい。つまり、安心してコーナリングを堪能できるわけです。

このときに感心した点がふたつ。

まずはシート形状が素晴らしい。フラットで幅が広く、適度に硬質。おかげで、ハングオフでもお尻とシートの接触面積が大きく、リヤタイヤのトラクションが明瞭に伝わってきます。一般的なスーパースポーツのように滑り台(後ろ上がり)じゃなくて、水平に近い感じだから、ブレーキング中の体の保持も楽。それでいて、コーナーの立ち上がりでも、しっかりとお尻を支えてくれます。

幅が広いぶん、足着き性には不利ですが、1日のうちの95%くらいは乗車している(足を着いていない)わけですから、ライディング・プレジャーが高いほうがいいですよね、やっぱり。足着き性が不利といっても、身長170cmの僕はまったく不安を感じません。

もうひとつの美点は、ステップまわりの形状が優れていることです。

Rc8_4

旋回中は車体のホールドが特に大切で、ヒールガードが小さかったり、その形状が悪かったりすると、体に余分な力が入りがちになります。その点でRC8は、クルブシでフレーム(写真の黒いパイプ)をしっかり支えらる。これは安心です。しかもカカトでスイングアームの動きまで察知できる。

KTMのマシンは、どれもマン-マシン・インターフェイスといいますか、体が触れる部分(燃料タンクやシート、ステップまわり)の形状が秀逸で、高いフィット感を得られます。このRC8も例外ではありませんでした。KTMのテストライダーたちは、本当にバイクのことをよくわかっているし、走るのが好きなんだなぁ……と感心させられる部分ですね。

ツインの不利を逆手に

さらに乗り込んでいくと、ディメンション設定の素晴らしさに感銘を受けます。

以前は、エンジンを前へ前へと搭載して前輪荷重を稼ぐのがスーパースポーツの常套手段でしたが、ホンダのモトGPレーサー・RC211V(初代)が常識を打ち破って以来、新たな流れが出てきています。

ちなみに初代RC211Vは、「アスファルト路面を走るモトクロッサー」をコンセプトに、重心位置をできるだけ車体の中央に配置し、360度どの方向にも自由に動けることを追求していました。レース後半にタイヤが滑り始めても、簡単にコントロールできるように、という狙いです。

以来、ホンダやカワサキはライダーとマシンの重心を近づけ、ライダーがさほどアクションせずとも人車一体感が得られるマシンづくりを進めています。

様々なバイク開発者の話を総合すると、どうやらマシンの重心(直4エンジンの場合はシリンダーのやや後方)とライダーの重心(乗車姿勢をとったときに、おヘソの少し前あたり)が近づいたときに人車一体感が生まれるようです。ということは、前輪荷重至上主義のマシン(マシンの重心も前寄り)は、それだけライダーがイン側前方にダイブしていかなければ、人車一体感を得られないことになります。このアクションを「操る喜び」とメーカーは呼んでいるようです。

一方、マシンの重心が中央寄りにあるマシンは、もともとマシンとライダーの重心が近いぶん、少ないアクションでも人車一体感を得やすい。いつでも安心してクルクルと曲がれるわけです。ホンダ・CBRシリーズやカワサキ・ZZR1400なんかが、この典型ではないでしょうか?

これを「曲がるのが簡単で(扱いやすくて)つまらない」というライダーもいますが、僕はそうは思いません。やっぱり1日中走っていると、疲れにくくて、我慢が不要なほうが(どんなシチュエーションでも気持ちよく曲がれるほうが)、帰宅した時の充実感は大きいですからね。不満や不完全燃焼感が残ると、いやなものですよ。

RC8に話題を戻すと、クラッチがちょうどホイールベースの中央付近、しかもロール軸(倒し込み方向に回転運動するときの中心線=後輪接地点付近を通り、フロントフォークに直交する線と言われる)の上に載っていることがわかります。

Vツインエンジンはもともとエンジンが前後に長く、前方には配置しにくい。ならば、それを逆手にとって、初代RC211V的にマシンの重心とライダーの重心を近づけ、自由自在に動けるようなハンドリングを狙ったのだと推察されます。Vバンク角を一般的な90度ではなく、75度としているのは、マスの集中化のためでしょう。

そして、クラッチのやや上方、ロール軸にそってクランクセンターを配置している。クランクやクラッチは、重いものが高速回転運動をしていますから、これらをどこに置くかで、ハンドリングがかなり影響を受けるんですね。

RC8はすべてをセンターに! これが、重心のつかみやすさ、ピッチングセンターのつかみやすさ、自由自在なハンドリングにつながっているんだと思います。

もうひとつ付け加えておくと、ツインは幅がスリムで左右への運動性が俊敏な半面、旋回中は直4エンジンほど安定感を得られない特性があります。しかし、RC8はマシンの重心がセンターに集中しているぶん、不安定な感じがまったくなく、安心してバイクに体を預けて立ち上がっていけます。

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前後サスペンションのクオリティも高いですね。動きもすこぶる滑らかで、作動抵抗を感じません。後方シリンダーのエキパイに、リヤサスへの輻射熱を防ぐヒートガードが付いているのもサスガです! DUCATIを乗り継いでいた頃は、この熱でリヤサスがタレてしまう(減衰力が低下してしまう)のに泣かされましたもん。KTMって、本当にバイクのことがよくわかっているメーカーです。

ちなみに、サスセッティングは標準設定よりも少しダンパーを効かせたほうが好み。自由にいじれますから、全く問題ありません。

こうしたRC8に比べると、1198系は前輪荷重を稼ごうとしていますから、ライダーがいろいろと動いて、おいしいところにハメてあげないといけない。これを難しい、わずらわしいと感じるか、操る喜びと感じるかが、「購入してよかった」と納得するかどうかの分かれ目でしょうね。

ついでに国産直4スーパースポーツとも比べておくと……高回転域を多用できるなら国産直4のほうが快感でしょう。ただ、中速域でもスロットルで操る楽しみが大きく、後輪が路面をしっかりと蹴っていく“ツインの面白み”を知ってしまうと……日本の速度域ではRC8のほうが楽しめると思います。

4速マップが最高

FI(燃料噴射)のマシンは、ギヤによって異なったFIマップを持っているのが常識ですが、RC8の場合は4速マップの出来がすごくいい。ちょうど、国際レーシングコース(SUGOや富士、鈴鹿など)でいちばん多用するのがこの4速ではないでしょうか?

パワーが滑らかにつながり、実にコントロールしやすいんです。それでいて、かなりパワフル。僕が試乗した日本仕様は、各種規制の問題から、最高出力が98psに抑えられていますが、まったく不足を感じませんでした。むしろ、スロットルを大きく開けられる快感のほうが強いといえます。

また、1速のギヤレシオが高いのもRC8の特徴ですね。だから、市街地なんかはほとんど1速。ここは慣れないとギクシャクしがちですが、まぁ許せます(笑)。本当においしいのは3速からですけど……。

僕なら買い!

さぁ、結論です。ツイン好きの僕なら、迷わず「買い!」ですね。

なんといってもポルシェ――つまり、実用的で、ライディングの自由度が高く、いつでも“おいしいところ”を味わえるんですから。刹那的で、官能的な1198系も大好きなんですが、サーキット走行ではなくスポーツツーリングをメインにしていて、1回の走行距離も長めな僕には、RC8のキャラクターのほうが合っていると思います。

とても知的なメーターもそそりますし……。

Rc8_3

冷却水やエンジンオイルタンクへのアクセスが容易なところ、ブレーキラインやケーブル類の配置が美しいところも、KTMの美点です。パリダカをはじめ、各種レースで勝ち続けてきたノウハウが、こういうところに表れているんだと思います。トラブルの原因になりそうなものは、転倒時に損傷を受けやすい所には出さない。もし損傷しても、すぐに直せるように――こうしたポリシーを感じます。

あとは、KTMに精通したショップを探し、優れたメカニックと出会うことですね。バイクライフの充実度は、ショップとメカニックの姿勢にかなり左右されますから……。

僕の場合は子供の学費が雪だるま式に増えそうなんで(笑)、いますぐに購入するのは難しい状況ですが、近い将来、RC8と付き合ってみたいと思ってます。それまでに、素敵なショップを見つけようっと!

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